2023年1月19日、株式会社POPERと弊社FCEエデュケーションは「学校や学習塾等の教育現場におけるDX推進に関する業務提携契約」を発表しました。教育現場のICT化が急速に高まる中、両社の持つ経営資源を相互に活用することで、学校・学習塾といった幅広い教育現場に対して、教務・校務(バックオフィス)両面でのDX促進を目的に締結された今回の業務提携。
しかし、その裏側にはリリースには載せきれなかったお二人の思いがありました。
そこで、今回はPOPER代表の栗原社長とFCEエデュケーション代表の尾上、二人の代表にお集まりいただき、提携の背景や今後のこと、EdTechの可能性や教育への思いなどさまざまに語りつくしていただきました。
▲株式会社POPERの代表取締役社長の栗原さん(右)とFCEエデュケーション代表の尾上(左)
株式会社POPRE様
2015年創業。学習塾を対象にしたクラウド型業務管理システムのリーディングカンパニー。「教えるをなめらかに」をミッションにバックオフィス業務の効率化及び保護者とのコミュニケーションを強化するため、SaaS型業務管理プラットフォーム「Comiru」やリモート教育をより効果的に実現しやすいオンライン授業・自宅学習支援サービス「ComiruAir」などを展開されています。導入法人数は、約1,200社弱、教室数では、4,500教室に至ります。
代表取締役社長 栗原慎吾さん
2007年、外資系化学メーカースリーエムジャパン株式会社に入社。2011年、ソウルドアウト株式会社に入社。2012年、友人が立ち上げた個人塾に共同経営者として参画し、このときに塾経営の実態を深く知る。2015年、株式会社POPERを設立。将来は、手びねりの陶芸に挑戦したいとのこと。
株式会社FCEエデュケーション 代表取締役社長 尾上
2002年(当時)一部上場経営コンサルティング会社に入社。営業推進本部にて、フランチャイズの加盟開発に従事する。2004年には「7つの習慣J®」事業の展開に関わる中日本や東日本地域のマネージャーを歴任。2016年にFCEエデュケーション取締役、2018年に同社代表取締役社長に就任後、現職。2019年にはFCE Holdings(現FCE)取締役にも就任。得意料理は「粕汁」
「さらに教育業界全体に貢献していこう」2週間違いの上場がきっかけに
――今日はよろしくお願い致します。まずはご上場おめでとうございます!なんとPOPERさんと弊社は、たった2週間違いの上場!偶然でしたが、嬉しかったです。
(2022年10月27日弊社が上場、2022年11月15日にPOPER様が上場)
栗原さん:ありがとうございます。尾上さんとは前からの知り合いで、お互いに上場準備を進めているのはなんとなく知っていたのですが、蓋を開けてみるとほぼ同時期の上場で、びっくりしました。
尾上:まさかこのタイミングとは思っていなかったですよね(笑)
栗原さん:もう本当に(笑)。今回の提携もお互いに上場をして、一段視座を上げて業界全体に貢献していきたいですねというところから始まりました。
尾上:そうでしたね。でも、私はもっと以前からPOPERさんと何か一緒にやりたいなと思っていたんです。POPERさんのお客様からの評価やその評価を生んでいる企業姿勢の部分を見させていただいて、いつか一緒に何かできればなと思ってきました。ただ、なかなか弊社側にPOPERさんの強みを活かせるタイミングがなくて…。今回、「フォーサイトアプリ」というデジタル手帳型のICTツールを開発、提供していく中でやっと具体的な話ができるようになりました。
相互の経営資源を活用し、教育現場の課題解決とビジネスのスケールアップを
ーー今回の提携で、実現したいことや期待していることは何ですか?
栗原さん:まずすぐにやりたいなと思っているのは、Comiruとフォーサイトアプリの連携です。私たちのサービスであるComiruは4500教室に使ってもらっているのですが、ユーザーさんが「フォーサイトアプリを使いたい」と言ったら、すぐに使えるようにシステム連携したいと考えています。これは我々としてもアップセルに繋がっていくでしょうし、FCEさんからすれば4500教室に対して、即アプローチができる状況になります。
また、新規のお客さまに対しても、我々がフォーサイトアプリを販売促進していき、最初はフォーサイトをつかっていたけどComiruも使いたいとなったら、すぐにご利用いただけるような形にもっていきたいと考えています。
尾上:そうですね。私たちは学校マーケットを強みにしていますが、例えばフォーサイト手帳を使っていただいている学校に、Comiruを提案できれば、校務でとても忙しい先生方の負担軽減が期待できます。私たちのビジネスには、アップセルに繋がります。逆に、学習塾マーケットにはComiruのニーズの力を借りることによって、新規のお客様を開拓することができます。顧客単価を上げるという点と、お客さまの範囲(数)を広げるという両面において、お互いのビジネスのスケールアップに繋がるのが今回の提携でもっとも期待できることだと考えています。
それに、今回は先生方にとっても画期的なんじゃないかと思っているのが、サービスをワンストップで提供できるということ。結局、今、ICTツールがものすごく普及したおかげで、先生や生徒がいくつものツールを使っていて現場が複雑化している状況もあります。そういう煩雑さをシンプルにできるという点も期待しているところの一つですね。
▲POPERさんが提供する業務管理システム「Comiru」
お互いの強みを生かし合い、学び合う
――栗原さんと尾上さんはもう5年も前からお知り合いなんですよね。お互いの強みをどうとらえていますか?
栗原さん:尾上さんとは、事業の話もそうなんですが、経営者の先輩としていろいろ相談させて頂いています。最初お会いしたときは、めちゃくちゃ怖そうな人!って思いましたけど…実際、話してみるととても気さくな方でした(笑)。
尾上:えーーー、そうだったのですか!ショック…。私の方は、第一印象「イケメン!」と思っていたのに(笑)。
私がすごく印象的だったのは、お客さんのことを考えてここまで現場目線で、プロダクトのことを考える人っているんだというぐらい、情熱をすごく感じたこと。
――それはどういう点からですか?
尾上:実は、弊社も「7つの習慣J®」オンラインというプログラムのフランチャイズ本部として本部管理ツールとして「Comiru」を導入させていただいている側でもあるのですが、まだまだ駆け出しで状況に応じて仕組みを変えていく必要があるんです。
その変化に対して、本来でしたら「今ある機能以外はありません」で終わりなのですが、POPERさんはそういう現場の声を『一人から声が上がるということは、皆がそれで困っているかもしれない』という形で取り入れてくれて、サービスに活かしてくれました。そういう姿勢が本当に素晴らしいなと。
栗原さん:確かに、そこが私たちみたいな小さい会社の生命線だと思っていました。実際、それを実現できるエンジニアチームがたまたまうちにはいたというのもありますね。
尾上:確かに、やろうと思ってもできることではないですよね。現場に徹底的に寄り添う姿勢とそれらを実現してしまう確かな技術力がPOPERさんの強みですよね。
栗原さん:一方、FCEさんは本当にいろいろな事業をやられていて、特に学校領域で言うとフォーサイト手帳もそうですが、「Find!アクティブラーナー」という教員向けの動画プラットフォームもお持ちですよね。実は、大手の教育会社さんもその領域に入りたいと思ったけれども、無理だったという話を聞きました。でも、FCEさんは大手が手が出せなかったことをすでに形にしていて…。スタートアップの戦い方って、これだよなと思いました。ある種、理解し難いというか、合理的には絶対に説明できない戦い方というか…。
尾上:理解し難い…褒めてます?(笑)
栗原さん:はい、もちろん(笑)。組織が大きくなるとアイディアや新規事業とかが育ちづらいのですが、FCEさんはうちよりずっと組織が多いのに、どんどん育ってきている。これはどんな仕組みがあるのだろうと、すごく気になっていました。でも、社員の皆さんにお会いすると距離感が近いというか、「自分のやりたいことをやって良い、それに対して投資する」という組織の雰囲気を感じました。そういう面も勉強させていただいています。
▲FCEエデュケーションが提供する「フォーサイトアプリ」
プロダクトありきではなく、現場の方たちに寄り添えるところが最終的に生き残っていく
――教育業界は少子化の傾向もあり、伸びないという印象を持たれる方も多いと思いますが、お二人にとって教育業界はどのような業界ですか?
栗原さん:確かに10年、20年という長期のスパンで見た時には、あらがいようがない部分なのかなとは思っていますが、塾マーケットに限ってみればこの10年ぐらいずっと横ばいなんです。その理由としては、単価が上がったとよく言われるのですが、どちらかと言うとLTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)が伸びているというほうが正しくて。つまり、低年齢化しているんです。あとは習い事。
Comiruはスクール運営の裏側のシステムなので、塾マーケットと隣接している習い事マーケットもあわせて狙っていくと、マーケットが更に2倍とか3倍ぐらいになってきます。そういう形で我々も大きく成長できると考えています。
尾上:LTVが伸びているというのはまさにそう。うちも創業当時「7つの習慣J」のプログラム導入先は、小・中学生のみでしたが、それが高校にまで広がり、今ではサービスの形を変えて、専門学生までをカバーする領域の事業展開に変わってきています。アナログであり続ける部分とそうでない部分の機微を読み取ることが重要 栗原さん:教育業界のまだまだ可能性はあると思っていますが、その一方で、このEdTechというのが、教育業界をいっそう複雑化させているような気はしているんです。
―――複雑化?
栗原さん:はい。EdTechによって、教育が個別最適されるとか、いろいろな利点がある一方、その背景に実は人件費を削減できますとか、そういうのが強く出過ぎてしまうと本末転倒になってしまうと考えています。やっぱり教育の一番大事な部分って「人」じゃないですか。歴史を振り返ってみても、今の学校制度みたいなものが普及する以前は、例えば吉田松陰とか緒方洪庵とか志をもった個人が塾を開いて、そこから世の中を変えるような人間がたくさん輩出されている。
教育の目的って、最終的には国や世界を良くしていく子どもたちを育てていくということと考えた時に、やはりその「人」を育てられる先生というという存在が、めちゃくちゃ大事という本質的なところは多分変わらないなと思っています。 アナログにしなくてはいけない部分は、アナログなままでなければいけないし、そこの機微を読み取れるかどうかが、EdTechにおいてはめちゃくちゃ重要なポイントだと思っています。
尾上:確かにそれはとても大事ですね。いろいろなツールが溢れすぎて、先生や生徒たちがICT疲れを起こしてしまっている可能性もありますよね。
栗原さん:そうですね。これだけEdTechというのが氾濫しているので、本当の意味で教育的価値を高めていくIT化って何か?ということが、問われる時代になると思っています。だからこそ、現場の方たちが言う意見をシステムに取り入れていくことがEdTechとして大事になるポイントなのではないかなと。
尾上:なるほど。確かに今、EdTechをはじめ他のマーケットで勝負してきた人たちが教育マーケットに参入してきて、ある意味取り合いになってきています。だからこそ、プロダクトありきな発想ではなく、現場の方たちに寄り添って、商品開発や改善をしていくところが、最終的に生き残って、無くてはならない存在という形になっていくのだろうなという感覚が私もありますね。
先生になりたい人がさらに増えていくような状況をつくりたい
尾上:そしてもう1つ、栗原さんがおっしゃったことに加えて、教員になりたい人も減ってきているということに危機感を持っています。地方ではすでに教員不足が起こっています。これは、教員は大変というようなニュースが先行して、志望度が下がってきているのだと思います。なんとかEdTechの力で、先生をもう一度あこがれの職業にして、なりたい人がどんどん増えていくような、そんな状況というのを作り出せないかなと思っているんですよね。
栗原さん:そのためには、先生が生徒と時間や心の余裕をもって向き合えたり、先生との関わりによって成長実感が持てたり、そんな環境が大事ですよね。
尾上:そう。そして、そうした環境を作っていく上で、私たち民間事業者が果たせる役割はすごく大きいはず。公教育がどうとか、民間教育がどうとかいう対立構造ではなくて、お互いが協力しながら、子どもたちや先生たちのために何ができるのかというところを考えていくことが、今後は強みになってくると思います。
単なるお金儲けではなくて、先生たちにとってのベストは何か、生徒たちにとってのベストは何か、というのを考えていく先に、ビジネスとしての発展というのも後から付いてくるのかなと思いますね。
提携による事業のスケールとさらなる貢献、両社で次のステージへ
栗原さん:そういう意味では、私たちの今回の提携は一つの挑戦だと思っているんです。
尾上:確かに。
栗原さん:やはり会社が違うので、お互いに持っている目指ものや方法論など異なる部分はあります。でも異なるからこそ、同じ高い山を目指していくともっと高いことができるはずだと考えています。
小さい視野で考えるとFCEさんと弊社は競争関係にあるかもしれないですけれども、もっと大きいゲームで考えたら、両者勝っているといった状況を作れるかどうか。ここがめちゃくちゃ大事。でも、そこはこの5年間ずっとコミュニケーションを取ってきましたので、御社となら実現できると思っています。
尾上:そうですね。知り尽くしたと言うと語弊があるかもしれないですけれども、本当にそういう5年間があって、提携を決めていますので、単なる提携とは意味合いが違っていて、お互いの事業のスケールという点に関してはかなり確信をしています。そして、私は、先生たちの課題を解決して、その先に、生徒たちの笑顔があるわけですけれども、先生たちが今一度、主役になれるというか、そういう存在になりたいなと、そしてそれを支えるのが私たち、みたいな関係になれたら一番嬉しいです。
栗原さん:本当、おっしゃる通りです。私たちも同じような考えでやっています。今回は、フォーサイトアプリとComiruの連携がメインですが、いろいろなことで多分もっと連携できる可能性もあると思います。今回の提携はスタートとして、教育業界にEdtechの力をもって貢献してきたいですよね。いえ、貢献していきましょう!
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両社の新たなチャレンジは始まったばかりです。しかしそれは両社にとっては第一歩でしかすぎません。ここからさらに何が始まる予感にワクワクが止まらない対談でした。「違いがあるかあらこそシナジーが生まれる」POPERさんと大きなシナジーを創り出し、教育業界にとってなくてはならない存在にともになれれば嬉しいです。
これからの私たちにぜひご期待ください!
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