(お話を聞かせてくれた人)
前FCEエデュケーション代表取締役社長。チャレンジカップ2008~2018までチャレンジカップ実行委員長を務める。現在はFCE Holdings(現FCE)執行役員として、グループ全体のマネジメントを担う。
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私たちの理念。
『チャレンジあふれる未来をつくる』
この実現を目指して私たちが15年間続けているものがある。それが『チャレンジカップ』。
チャレンジカップとは、小学生~高校生を対象とした「自分で決めた目標に挑戦する」大会で、いわば、子どもたちのチャレンジの甲子園。半年間でチャレンジしたいことを自分で決め、その目標達成に向けて頑張るだけ!チャレンジ終了後、子どもたちには取り組みを報告してもらい、特に素晴らしい活動をしたチャレンジャーたちを表彰するという流れだ。
子どもたちがチャレンジする目標に大きい、小さいはない。勉強、スポーツ、社会貢献、一度はやってみたかった事、何でもOK。自分のなりたい自分に向けて、本気で頑張りたいと思う事なら、それがチャレンジカップの目標なのだ。
子どもたちのチャレンジは本当に様々で…
『横浜から京都まで自転車で旅をする』/中学生
『中学校を改革し、生徒数を増やす』/中学生
『トンネルの落書き消しとトンネル近くにある公園のトイレ掃除』/高校生
『パティシエになる夢を実現するために、30種類以上のお菓子のレシピ作りにチャレンジ』/高校生
『みんなに優しいロボットを作る』/小学生
『怪我を克服し、フリースタイル・フットボールの技を50種類覚える』/高校生
『家族のために家族の手伝いを5000回する』/高校生
『仲良しグループ全員で第一志望の高校に合格する!』/中学生
『カルタ作りを通じて、人口15000人の松川町を、もっと良くする』/中学生
『クラウドファンディングを利用して、日本の良さを海外の人たちに伝える』/高校生
『ビザ釜をつくって、自分でピザをやく』/中学生
などなど…多種多様なチャレンジが溢れる。(子どもたちのチャレンジ内容を見ているだけで楽しい!)
この15年でチャレンジカップに参加してくれた子どもたいはなんと14万人近く!
そして、夢や目標に向かって全力で取り組む子どもたちの姿は小説やテレビドラマにもなった。
チャレンジカップは私たちFCEグループがとても大切にしているイベントで、受賞したチャレンジャーの中からグランプリを決めるグランプリ決定戦という一日は、15年前からグループ全員が運営に参加するという一大イベントでもある。
そんなチャレンジカップはどんな『企て』から始まったのか。
『子どもたちの無理の壁を壊したい』
鈴木:チャレンジカップがスタートしたのは2007年です。2004年から私たちはFCEエデュケーションという会社を設立し、7つの習慣Jというプログラムを提供していました。
プログラムでは、学んだことを「知っている」だけではなく「できる」状態にするために、学んだことをアウトプットさせる『今週のチャレンジ』というものを設けているのですが、『今週、こんなチャレンジやってみようよ』そう問いかけても、子どもたちか返ってくるのは「自分には無理」「できない」「難しい」そんな言葉ばかり…。できるかどうかやってみないと分からないのに、どうしてやる前から諦めてしまうのだろう…。そんな思いをずっと抱えていました。そして、保護者や先生方と話をする中で、子どもたちの『無理』『できない』は、日常生活のいたるところで見受けられることに気づいたのです。
これまでの経験や周囲の声掛けから、子どもたちの頭の中には強固で頑丈な『無理の壁』ができてしまっているのだと感じました。それが子どもたちのチャレンジする気持ちを阻んでいるのだと…。
そして、同時に強烈な危機感も持ちました。当時はFacebookやTwitter、Amazonなどさまざまな国で、若者のチャレンジによってこれまでになかった新しいビジネスが生まれている時期でもありました。これからの日本を担う子どもたちが「無理」「できない」と言ってチャレンジするのを諦めてしまうようになったら、日本という国はどうなるのだろう…。
この「無理の壁」を壊すようなきっかけを子どもたちに与えたい…
そんな思いからスタートしたのがチャレンジカップなのです。
失敗するのが怖い、チャレンジして嫌な想いをしたくない、自分にはできないかもしれない…。
私たちでさえそう感じることがある。(チャレンジした先に素晴らしい経験が待っていると分かっていたとしても!)そうやって、強固に築かれた子どもたちの「無理の壁」を壊すことは容易ではない。チャレンジしたくないと思っている子どもたちに、チャレンジカップに参加してもらうこと自体、とても難しいのではないのだろうか。
鈴木:確かにそういう側面もあります。だから、チャレンジカップの場合、チャレンジは何でもOK、内容は一切問いません。これなら私にもできるかなとか、これはいつかやってみたいと思っていたんだというチャレンジでいいのです。また、チャレンジカップでは子どもたちが「これ欲しい!」と思うような副賞も設けていますが、副賞目当ての動機でもいいのです。そうやって、チャレンジカップをきっかけに、今までは踏み出せなかった一歩にちょっと踏み出してみて、小さな成功体験を積む。そうすることで、あれ?私も意外とやればできるかも…とよい意味で自分を裏切る体験をしてほしいと思っているのです。
最初から大きなチャレンジをする必要はない。これならできるかも…という一歩からはじめてみること。そして、小さな「できた」を積み重ねること。こうしたことの繰り返しで、いつしか子どもたちの無理の壁は「もっとできるかも」「あれもできるかも」という自信へと大きく形を変えていくのかもしれない。
そして、チャレンジカップにはもう1つ子どもたちの「無理の壁」を壊すための仕掛けがあるという。
鈴木:チャレンジカップは、結果評価ではなく、プロセス評価です。チャレンジの甲子園だからチャレンジが成功した人のみが評価されると思われがちですが、実は達成・未達成はそれほど重要視していないのです。
子どもたちは小さい時から結果で評価され続けています。〇〇ができた・できない、テストの点数、徒競走の順位、試合の結果、受験の合否…。もちろん結果で評価されることはとても大切なことです。社会にでれば結果で評価されることがほとんどですから。
ですが、結果でばかり評価され続けると、いい結果が取れそうな時は頑張るけれど、いい結果がとれそうもないときは頑張れない。チャレンジしないという思考を持ってしまいがちです。
一方で、頑張ったことや工夫したこと、昨日よりできるようになったことを評価すると、子どもたちは頑張ることや一生懸命に取り組むことに価値を感じ、チャレンジすることが楽しくなると思うのです。
工夫してみたこと、コツコツ継続したこと、勇気を出すために葛藤したこと、チャレンジしようと思った気持ち…これらはすべて結果につながるとは限らない。しかし、チャレンジしたからこそ自分の中で生まれた確かな変化だ。そういった変化に目を配り、称え、励ますこと。「チャレンジ=無理、怖い、失敗」ではなく、「チャレンジ=楽しい!」を感じることできたこども達は、これから先もさまざまなことに果敢にチャレンジすることができるはずだ。
「親友を2人つくる」というチャレンジ
鈴木:私自身がとても衝撃をうけたチャレンジがあります。それが当時高校2年生だったある男子学生のチャレンジです。彼は小学校の頃にいじめをうけた経験があり、そこから自分のカラに閉じこもるようになり、9年間も友人と呼べる人がいませんでした。
しかし、そんな自分を変えたいと「友人を二人つくる」という目標にチャレンジしたのです。私たちからすると友人を二人つくるというのはそれほど大変なことではないかもしれません。しかし、彼にとってはとてつもなく大きなチャレンジだったのです。
途中、勇気が出ずに何度もチャレンジを諦めようかと葛藤しますが、そのたびに彼の頭をよぎるのは「僕はいつまで友だちのいない人生を過ごすのだろう」という言葉。
そして、ついに勇気を出して声をかけることができ、友人をつくることに成功したのです。
「今は学校に行くのが楽しくてしょうがない!」
そう話す自信に満ち溢れた彼の姿は今でも忘れられないです。それから彼は、どんどん積極的になり、大学では自らサークルを立ち上げ、部員を集め、自らリーダーとして活動していると聞きました。
チャレンジの経験は人生をも変える大きな自信をくれるのだと痛感しました。自分にもできた!という達成感や逆にできなかったという悔しさは、次へのチャレンジの原動力となります。そうやって、さまざまなことにチャレンジしていくきっかけを提供できれば良いなと考えています。
チャレンジの連鎖、そしてチャレンジあふれる社会へ
鈴木:チャレンジは連鎖します。例えば、目標に向かって一生懸命に取り組んでいる姿ってものすごく刺激をもらいませんか?自分も何かにチャレンジしてみよう、頑張ってみよう、そんなポジティブな気持ちになりますよね!チャレンジカップも同じ。自分で決めたチャレンジに一生懸命に取り組む子どもたちの姿は、ご家族や友人、地域の方々へと大きな影響を与えています。そうやって、一人のチャレンジが伝播して、チャレンジの連鎖が生まれれば、日本は今以上に面白いチャレンジと活気あふれる場所になる。それが私たちの企てであり、理念なんですよ。
チャレンジするということは本来、楽しいことのはずだ。できなかったことができた喜び、やりとげたときの達成感、仲間と衝突を繰り返しながら強くなっていく絆、未達成だった時の悔しさ…。そうしたチャレンジの楽しさに気づいてほしい、また、チャレンジを通して、小さな成功体験と成長実感を積み重ね、自信を深めてほしい。そんな思いからはじまったチャレンジカップ。
これまで、自分で決めた目標を目指すプロセスを通して周囲が驚くほど成長し、自信を深めた子どもたちをたくさん輩出してきた。達成、未達成に関わらず、目標に向けてやり抜いた子どもたちの顔は自信に満ち溢れた笑顔を見せてくれる。こうした笑顔が増やること、そして、未来を担う子どもたちのチャレンジ精神が育てば、日本はさらにチャレンジあふれる国になるはずだ。
私たちは、『チャレンジあふれる未来をつくる』ため、チャレンジカップを通して子どもたちの心に火をつける、そんなきっかけを提供してゆく。
そして、それがチャレンジカップの「企て」なのだ。
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