FCEの仲間たちが語る「One Story」
第2回は、FCEグループの石井努が登場します。
【こぐれ的 石井さん紹介】
石井さんはFCEエデュケーションとFCEトレーニング・カンパニーで取締役を務める一方、FCEトレーニング・カンパニーで実施している「7つの習慣®InnovativeMind研修」のエグゼクティブファシリテーターでもあります。「7つの習慣®研修」と言えば、米国フォーチューン100社の90%が、グローバル・フォーチュン500社の75%で導入され、日本でも3,500社以上の導入実績を誇る超有名な研修です。
石井さんが社外向けの講師としてスタートしたのは2013年頃。年間平均600名の参加者に「7つの習慣®InnovativeMind研修」を実施し、参加者の年間平均満足度は、なんと99.5%!!!!その秘訣は何なのか?普段は、常に穏やかなニコニコ笑顔で、メンバーの相談をどんなに忙しくても、親身になって聞いてくれます。FCEグループのマザーテレサ…いやいやファザーテレサ?的な存在であります(笑)
その笑顔の裏にはどんな過去が、そしてどんな思いが隠されているのか。そんな石井さんの素顔に迫っちゃいました!
こぐれ:7つの習慣®InnovativeMind研修の講師になったのはいつからですか?
石井 :2006年に社内向けの7つの習慣研修の講師としてスタートしたのが始めです。今のように社外の方々に対して研修を担当させていただくようになったのは2013年からですね。
こぐれ:石井さんが担当された7つの習慣®InnovativeMindでの参加者アンケートにて「満足している」と回答した方が、年間の平均でなんと「99.5%」!とんでもない数字ですよね…平均ですよ。平均。なぜこんな数字になるんでしょうか?
石井 :そういったお声をいただけていることは大変有難いことですよね。なぜでしょうね…
こぐれ:なぜなんでしょうか?
石井 :1つ心がけていることとすれば「徹底した準備」です。ありきたりでごめんなさい…(笑)でも、それこそが自分ができる唯一の方法だっていうふうに考えてきました。
こぐれ:「徹底した準備」?
石井 :そう。例えば、初めて7つの習慣®研修の社内講師を担当した時の話です。当時、全社員に向けて、ファシリテートする立場を任せてもらいました。
こぐれ:全社員というと相当な責任がありますね。そこで石井さんはどんな準備をしたのですか?当時から人事のポジションも任されていらっしゃったんですよね?
石井 :本当に「地道」の一言です(笑)
例えば、時間を計ってロープレを行い、15分喋りっぱなしのところがないかをチェックしたり、ここは一方的に話しすぎだから演習を入れよう、でもさっき書く演習をしたから、次は発言する演習にしようとか、すべて計算して組み直して、それを一言一句漏らさないようにとトークマニュアルとして書き残しました。実は、7つの習慣®研修には、厚さ5㎝ぐらいのすごい研修講師マニュアルがあるのですが、私は本当に自信がなかったので、そのマニュアルをもとに、当日話す内容をトークベースでパソコンに打っていきました。気が付くとExcelの行数8,000行にもなっていたんです。印刷すると…A4にびっしりと250枚ぐらいになるボリュームです(笑)そのトークも演習や事例に合わせて、色分けして分かりやすくしたり、とにかく自分にできることをトコトンやりましたね。ロープレなんかも、細かいのを含めると100回以上はやっているかもしれないです。
こぐれ:それはすごい…。当時は研修の前に当時の会長(創業者)のチェックも入るんですよね?
石井 :そうです。でも当時の会長は私の作ったオリジナルのマニュアルのボリュームを見て、サッと読まれて「もう結構です。このまま頑張ってください」と(笑)
こぐれ:それだけの量を見たら、もう大丈夫だろうと思いますよね(笑)結果どうだったのですか?
石井 :もちろん最初はうまくいかないことだらけで参加した社員のみんなに助けられました。その後は、とにかく自分が研修を受ける方々に対してできることは何か?ということを考え、とにかく「徹底した準備」だ、ということで。そこはブレなかったですね。
こぐれ:そういった徹底した準備の繰り返しが、今の平均満足度99.5%につながっているんですね。そもそも石井さんは人前で話しをしたりするのは好きだったのですか?
石井 :いや、逆です(笑)絶対に人前で話したくないタイプでしたし、実際、学生時代や上司にも「絶対、人前に出たくないです」って言っていましたね(笑)
こぐれ:そんな石井さんがなぜ研修講師を…?
石井 :正直、きっかけは「無茶ぶり」ですね(笑)
こぐれ:「無茶ぶり」??
石井 :そう。当時の上司が管理職向けの研修の講師をしていて、私はその準備を手伝っていました。まだ入社2年目の時でしたね。その日も研修を予定していたのですが、当日になって、いきなり上司から「今日はオレ行かないから、石井が代わりに講師やるんだぞ!」って(笑)
こぐれ:えー!?当日ですか?そんな無茶ぶりで話せたんですか?
石井 :内容は何度も聞いていたので、頭に入っていましたが、それでもテンパりまくりでしたね。まあ、ずっと人前で話すことを避けてきましたから。だから、講師としてのレベルは、今思い返しても、顔から火が出るほど恥ずかしい…。でも、聞いてくれる方々の時間をいただくわけなので、何か少しでも役に立ちたい、その一心でした。そのセミナーの後に、参加者の方々とすごく貴重な話ができて、そして気付いたのが、人前で話すことっていうのは自分自身も価値をもたらせる一つの方法なんだということでしたね。
こぐれ:価値…?
石井 :そう。つまり「相手の役に立つ」ということです。その時に伺った企業のトップの方がセミナーの最後にその企業の社員の皆様に向けて「石井さんは入社2年目の方です。皆さんは部下の1年目や2年目のメンバーにここまでチャレンジさせていますか?すごく準備もしてくれていただろうし、内容以上に、石井さんがこの場に立っていることから学べることがありますよね」というふうに言っていただけたんです。
内容以上に伝えようとする姿勢が相手にとっては情報になる。もちろん内容も大切な情報なんですが、どういった想いで話しているかとか、相手のことを想って話しているかとか、伝えるというのはそういった想いも含めてのことなんだっていうことが分かりました。
こぐれ:他に得たことはありますか?
石井 :そもそもなぜ人前で話したくないのかを考えれば自分自身がどう見られているのか、こんなふうに思われているんじゃないかっていうところが気になっちゃうからだなって。でも、不思議なことに、準備を凄い一生懸命やると「どう見られたいか」とかは、あまり気にならなくて「伝えたいことだらけ」になるんですね。そうすると、人前に立つことが苦にならなくなったんです。まぁ、準備はそういう効果もあるんですね。
こぐれ:「徹底した準備」で心がけていることはありますか?
石井 :参加者を主役にすることですね。私が尊敬する講師の方がいるのですが「講師は謙虚じゃなきゃいけない、徹底して主役は参加者だ」とおっしゃっているんです。なので、私は参加者の方がいかに主役感をもってディスカッションなどを通して参加してもらえるか、研修に臨んでもらえるか、と。そういった環境をいかにつくれるか、ということを考えているんです。
例えば、BGMがあると気持ちがノリやすいので、参加者がディスカッションや発言するときはBGMを流します。そして、そのBGMもその場面、場面にあったBGMを用意するようにしています。これは、準備の中のほんの一部ですが、そういったところでも参加者の方々に主役感を感じていただけるようにしていますね。だから、アンケートに参加者の方が「参加者同士で話せたことが一番楽しかった」と答えてくれると嬉しいですね。
こぐれ:今のお話を聞いて、すごく納得感があります。というのも、石井さんの「参加者を主役にする」という考えは、社内で石井さんがメンバーに対して接する姿勢、マネジメントにも感じることができるからです。
石井 :そう言ってもらえるのは嬉しいです。確かにとても意識している部分ですね。周りのメンバーとの関わりの中で、本人からコントローラーを奪わないように意識しています。なぜなら、働いている社員一人ひとりが主役だからです。私個人としては、講師が目立つ研修はやりたくなくて、主役はあくまでも参加者の方々です。それと同じで、上司が目立つのではなく、メンバー全員が主役として働いてもらうことが大切だと思っています。トーマス・F・ストローの「H理論」というのがあるじゃないですか。その中に「放任型」というのがあるのですが、私の場合は「放牧型」ですね。
こぐれ:居心地が良さそうです(笑)
石井 :そう思ってもらえると嬉しいですね(笑)放牧のイメージは、大枠のガイドラインは決まっているけど、その中では何をやってもいいよっていうことです。その中で動きやすいように準備したり、サポートしたりするのが、私自身の仕事っていう考え方です。
こぐれ:柵から脱走しないですか?(笑)
石井 :そこが信頼関係だと思っていて、どっか行っちゃうことはないだろう、と相手を信頼しているっていうのはありますね。あとは色んな事をしちゃっても、何かしらそれをやる理由があるんだろうっていうふうに思って、何か答えが相手の中にあったり、可能性とか才能が相手の中にあったりするって思っていますね。こぐれ:話を聞くと社会人になってから一番大変だったのは、やはり講師デビューでしょうか?
石井 :いや、苦労というか、もっと辛かった経験がありますね。
こぐれ:どういったことでしょうか。
石井 :入社してから7年目でしたかね。数カ月間、寝たきりの状態になってしまったことがありました。
こぐれ:え?寝たきり…?
石井 :最初はぎっくり腰だったと思うんですが、それが治療していくうちに悪化して、最終的には椎間板ヘルニアが二段できているっていうふうに言われちゃって…外科手術で治るかもしれなかったのですが、神経が通っている箇所なので、最悪、下半身不随になる可能性も十分にある、ということでした。それはさすがに、ということで痛みを取る治療にしたのですが、それがもう全然良くならなくて、寝たきりになってしまったんです。後から聞くと、私の家内は「この人はもう一生寝たきりなんだろうな」と覚悟したそうです。
こぐれ:仕事どころではないですね。
石井 :そうですね。常に痛みが激しいし、思い通りに動かせないしといった状態で、例えばトイレに行くにしても30分以上かかってしまったり、食事もほとんど寝たまま食べたりするような状況でしたね。そういった状態なので、筋肉が落ちてしまって、足腰が自分でも驚くぐらい、どんどんやせ細っていきました。
こぐれ:7年目ということは30歳ぐらいでノリノリの時期ですよね。どういう心境でしたか?
石井 :そうなんです。当時は経営企画室長という立場にありましたし、その前の年に2,000人の中から年間最優秀社員に選出していただいたりと、すごく期待をされている時期だったんです。「よし!ここからさらに成果を出すぞ!」と思っていた矢先のことでした。その期待に応えられない、会社にも行けない。仕事も全くできない。ましてや生活も一人では何一つできない。自分が一気に社会のお荷物になってしまったような気持ちでした。心の中では「もうこの会社にいちゃいけない。辞めなきゃいけないんだ」っていうふうに思いましたね。
こぐれ:それは辛いですね…そこからどうしたのですか?
石井 :そんなどん底の時に、ある上司からダンボールが2つ自宅に送られてきたんです。なんだろうと思って、ダンボールをあけると、1つには、経営セミナーや講演が収録されたカセットテープがびっしり入っていました。そして、もう1つには、寝たきりの状態でパソコン打てる台と腰に負担がかからない座椅子が入っていました。上司からは一言「収録されているものを文字起こしして、経営者の視点でまとめろ」と。最初は何だろうと思ったんですが、それが上司の優しさだったんですよね。やることがないと自分の存在価値が感じらなくなって、つらい思いをしてしまうのではないかと。だから寝たきりでもできる仕事を与えて、居場所を繋ぎとめてくれていたんです。
それ以外にも100人近くいた新入社員の日報に必ずコメントを返信するという仕事やたくさんのことを任せてくれました。そんな上司の優しさが嬉しくて、どんな仕事も手を抜かず全力でやろうと思いました。例えば、新入社員への返信にしても適当に返信していると誰に返信したか分からなくなるため、新入社員の一覧を作成して、送った人に印を付けて、叱るような内容の返信なのか、褒めるような内容の返信なのか、ということも控えておきました。そして「この人は前回叱ったから、今回は褒めよう」というようにそれぞれのモチベーションを考えながら、100人全員に対して返信をしていましたね。その後、良い先生を紹介していただいて、なんとか歩けるようになりましたが、腰を悪くしてからは1年ぐらいかかりましたね。
こぐれ:ほっとしました。でも、本当に大変な経験でしたね。
石井 :そうですね。でも上司として、一緒に働くメンバーの居場所をつくってあげるということの大切さを学びました。さっきの話にも繋がりますが、メンバー一人ひとりが主役だという環境をつくっていくことで、その人自身の可能性も引き出せますし、その人の居場所をつくるということにもなるんです。それは私自身、働きたくても働けない状態になったことで、普通に働けることへの感謝とそういった人にもやれることがあって、その人に対して居場所を与えてあげることが本当に大切だと実感したんです。
こぐれ:最後の質問です。仕事全体として見た中で、特に大切にされていることはありますか?
石井 :誠実さですね。FCE Valueにも「自制・自律し、誠実であり続ける」という項目があるのですが「誰に誠実であるべきなのか」であったり、「誠実であるとはどういったことなのか」であったりということが、求められている気がしています。例えば、研修だと、参加者に「誠実」でありたいから「徹底した準備」をするし、参加者に「誠実」でありたいから、主役にどう思ってもらいたいか考えますし。あとは自分に誠実であるために、ミッションに対してもそうですが、今まで色んな人から頂いたフィードバックの内容も全部読み返してから毎回研修に取り組んでいるので、フィードバックしてくれた人にも誠実にいるべきだと思う。
ミッションに誠実、他人に誠実、自分に誠実、お客様に誠実、色んなものに対する誠実さっていうのはあると思うので、誠実さって実はすごく深いんですよね。感謝する心は誠実さがなければ生まれなかったり、そういった自覚がなければ、成り立たなかったり…といった感じで、すごく色々なものの原動力になっていたりしますね。もちろん、それが私の原動力になっています。でも、まだまだです。これからもずっと大切にしていきますよ。
こぐれ:石井さん、ありがとうございました!「誠実さ」こそが石井さんの原動力であり、その誠実さが研修の参加者アンケートの結果や日々のマネジメントに色濃く表れていたのですね。皆さんの原動力はなんでしょうか?
次回の「One Story」もお楽しみに!
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